薪窯製作記録

2015年9月28日

意を決して13年以上頑張った前作の薪窯を土台だけ残して一気にぶち壊した。

使ったのは鏨とハンマーのみ。

埃がたちこめさながら空爆され破壊された廃墟の様だ。

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2015年10月1日

土台に炉床を組み立て始める。ここは一番熱が蓄積される重要な所だ。前作の窯も年中薪を焚いていた炉床の部分だけ没落し崩壊した。

今回は不定形耐火物で1.5倍の厚さにスラブを施工し、その上に耐火煉瓦を設置した。

簡単そうに見えるが大判の煉瓦は重さが22キロ以上ありそれを一人で支えながら水平に正確に設置し接着するのは骨が折れる。

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2015年10月3日

正確に水平を取り耐火煉瓦を組んでいく。開口部のアーチには前作で使った煉瓦も使えるものは使った。

完成時の寸法を正確に割り出し仮置きしながら慎重に接着していく。

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2015年10月6日

煉瓦の接着には1260度まで耐えられる特殊な耐火ボンドを使用した。

これがすこぶる良い代物で作業がスカスカ進む。これがなかったら今回の窯もここまでうまく出来なかったと思う。

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2015年10月8日

煉瓦は1個3.5キロ位の重さがある。

当然ドームが高くなれば高くなるほど傾斜がきつくなり煉瓦を接着することも難しくなってくる。

そして接着する目地の厚さも重要で、前作は目地を厚く施工しすぎた為そこからクラックが入り歪みが大きくなり割れた原因だと思う。

今回は厚さを3ミリ以内に留めるつもりで施工したがやはりその分一発で素早くやらないと接着力が弱くなり重さでずり落ちてしまう。

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2015年10月10日

ここからが本当の試練だった。

煉瓦を仮置きして寸法を測りダイヤモンドカッターと鏨で切断し、また仮置きして微調整の研磨をしてまた正確に仮置きして隣に積む煉瓦の寸法を測り切断し~の繰り返し。

朝も早よから夕方までやっても1段しか進まない。積んでいくに従い煉瓦は大きく切断しなければならず、ダイヤモンドカッターは磨耗して替えを探しに工具店をさまよった。

まさに「孤独の旅路」であった。笑

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2015年10月11日

土台に上がって中腰で煉瓦を支え寸法を合わせ仮置きし切断して研磨して接着。

天井の高さが中途半端で背を伸ばすことが出来ずつらい姿勢のままの作業は腰にこたえる。

白人に狩り出された奴隷達は真っ暗な船底で立つことも横になることも出来ない粗末な木箱に2人1組で手足を結ばれ押し込められ汗糞垂れ流しで何週間も運搬されて目的地に着くころには半分以上が屍になっていたという。

そんな話を思い出しながら作業に没頭していた。このことは後になぜこの獅子面や龍の様な薪窯にしたのか?に通じている。(まぁ自己満っスけどね。笑)

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2015年10月13日

やっとドーム全体を積み上げた。

前作では砂を詰めた土嚢袋を型にして煉瓦を積み上げたが今回はちょっと考えてコンパネとダンボールで支柱を作りそれに沿って積み上げた。

結果的にこれはいい作戦と段取りだったと今でも思ってる。砂は後でかき出すのが大変だがコンパネは最終的には燃やしてしまえば良い。

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2015年10月14日

煙道の開口部から煙突への接続部の処理をどうするか?滅茶苦茶悩んだ。

ただ取り付けるだけなら簡単な事。

しかし獅子面の龍面の怪獣面のイメージに沿って窯を施工するうえでこの「鼻」に当たる部分はとても重要なのだ。

最小限の耐火物で耐火性を持たせ最終的に鼻に見せるようイメージしながら何回も仮置きして考えた。

煙道の煙突への開口部は吸い込みを良くする為前作より大きく開けた。

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2015年10月15日

耐火煉瓦を小さく切断し強度とバランスを考えながら煙突と煙道の開口部を接続した。

ドームは写真では見えないがドーム全体をセラミックウールで覆って土台からワイヤーで張って固定し、その上からパーライト(溶岩石が原料の耐火性・断熱性に優れ超軽量な骨材)を施工している。

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2015年10月16日

セメントを乾かしている間に内装工事。カウンターの足のドラム缶にペイントしたり拾い集めてきた流木をディスプレーしたり、メニューブックも新しく作り直したり、時間の許す限り思いつくものあれこれ手をかけた。

この作業は最高に楽しい!

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外の看板も流木と自宅の栗の木を使ってランダムに組み合わせペイントした。

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2015年10月17日

ここから腰に堪えるモルタル練りの作業だ。

トロ箱にセメントとパーライトと水を入れて左官クワで捏ね、自作のパレットに取って土台に上がりドームに塗り込んでいく。

焦って一気に厚くし過ぎるとストレスがかかり割れる原因になるので全体が均等な厚さになるように注意して施工する。

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2015年10月18日

だんだんイメージする怪獣面の形が見えてきた。

ここまでくればテンションも上がり楽しくて作業に没頭する。

パーライトの厚さは側面でも15センチ以上、天井部で20センチ以上はある。理想は30センチ以上取りたかったがそうなると土台からはみ出てしまう為断念した。

完成から今現在も割れも無く以前とは比べ物にならないほど蓄熱・断熱効果もあるためこれで十分満足している。

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2015年10月23日

最終章の獅子面・龍面・怪獣面窯装飾の作業だ!

焼き鳥屋の友人が父親の後を継いで秋保で石を切り出している。秋保石というその石は耐火性に優れ、軽く、加工しやすい。そして何より地元の石で獅子窯を装飾できる。これは素晴らしい!

使えない端材を分けてもらった。それをパズルのように組み合わせモルタルで貼り付けていく。

同時に薪窯の慣らし火入れの準備にかかる。装飾作業の間、少しずつ少しずつ電気コンロで窯を暖めていく。

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2015年10月25日

楽しいけれど根気の要る作業が続く。

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2015年11月2日

窯の後ろの壁をペイントする。獅子の巻き毛のイメージだ。

最後まで悩んだ「眉毛」の部分もなんとか納まった。

細い薪をくべ毎日少しずつ少しずつ温度を上げ窯を暖めていく。ここで焦ってはいけない。焦って急激に温度を上げると割れてしまう。

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2015年11月8日

怪獣の目を入れる。目玉の黒目の部分はグラインダーで削って薪を燃やしたときに出る煤を水で溶いて(墨)黒くした。この日からオープンまで強火でガンガン焚いていく。

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2015年11月13日

いよいよ怪獣面の薪窯が完成! より口を大きく開けてるように見せるため煤で口の中の部分も黒くした。

俺の分身「龍窯」だ!

これからまた15年は頑張らなくっちゃ!宜しく頼むぜ!